Love Letter














冷たい風が吹きつけるあの日。






忘れもしない、中学最後の日だった。









ひゅうっと風が吹き、セーラー服のひだをふわりとなびかせる。
もう暦上は春だというのに風は冷たく、何よりも寒い。
冷帯だから仕方がないと言ってしまえばそれまでなのだけど。
卒業証書を片手に、もう片方の手には卒業記念に作ったアルバムや、卒業アルバムなどが入っている袋を持っていた。
在校生が作るアーチをくぐりながら、もう次のオトナへのステップがすぐそこで待っていると思うと少々複雑な気分になる。
そんなことを思うのは卒業式だからだ、と思った。
まだ卒業生のほとんどは翌々日に発表される公立高校の発表を控えているためか落ち着きがない。
そう言う私はといえばK高校への推薦が取れたためそんなドキドキ感はなかった。

「なんか、もう卒業なんだねぇ」

ふと隣で歩いている親友の茉莉は感慨深げに一言呟く。

「そうだね。茉利は明後日の発表の方が気になるんでしょ」

くすっと笑って言うとニヤッと笑って「まあね」と白い歯を見せていった。
恐らくしばらくはこの笑顔とも会うことはないのだろう。
私も茉利も別々の高校へと進む。

「ね、言ったの?」

突然茉利は今の会話と関係のない話を始めた。

「何が?」

「何って、湊太によ」

「湊太がどうかしたの?」

「なーにしらばっくれってんのよー。告白よ。こ・く・は・く!」

「……あぁ」

その言葉を聞いて思わず頭痛がしてきた。
湊太―――七倉湊太、私と同学年の3年4組の生徒。
一度同じクラスになったっきり最後は別々のクラスで終わった。
その同じクラスになる前から気になっていた人。
ピアノは上手く、勉強も出来るが、少々難癖のある奴だけど―――いい奴でもあった。
少なくても私にとっては、の話である。

「何、その気のない返事」

「んー。したよ、告白」

「え? ホント? で?」

「で?って?」

きょとんとした顔で言葉を返すと茉利は一つため息をついて更に言葉を続ける。

「そりゃあ、決まってんでしょ。返事だよ、返事」

「あぁ、貰ってない」

「何でまた」

「だって、手紙書いて送っただけだもん」

「そうなの?」

「うん。面と向かっては言えないし、だから手紙だけ」

「だけど、返事を貰うことだって可能でしょうが」

「そうなんだけどさ……」

そこで口を濁すと茉利は訝しげな顔をして私の顔をじーっと見ていた。

「じゃあ、伝えるだけでよかったの? 本当は返事欲しいんでしょ?」

「そうだけど、いいの。それに聞けないよ」

「千加…」

「だって、最後はほとんどしゃべれなかったんだよ。あの噂のせいで」

前から仲が良いとは言われてたためか、私の好きな人は湊太だと卒業間際に噂が流れた。
結構色んな人が知っているから、多分本人の耳にも届いているはずだ。
本来なら直接言って、笑顔でさよならするつもりだったのに、それすら出来なくなった。

「本当にいいの?」

「うん、いいの」

「ふーん……」

納得がいかないと顔に出して口を尖らせていた。
私だって本当は聞きたいけど、無理だよ。
返事聞くのが恐いもん。
心の内で呟いてみたが、茉莉には聞こえることはない。
たぶん、この想いはずっと自分の中でしまうから。
きっともう会うことなんてないから。
そう思いながらアーチをくぐりぬけながら、ずっと歩いてるその先を見つめた。
アーチの出口あたりに彼はいる。
でも、目を合わせることなくその場を去った。
苦虫を潰すように、苦しさが胸に渦巻いていようと。
彼の姿を目に焼き付けると、この校舎を後にした。

3年間学んだ場所。


そして。


好きな人に出会った場所。



色んな想いが駆け巡ると、同時に彼に宛てた手紙を思い出した。



差出人のない手紙。




書こうと何度も思ったけれど、書けなかった。





噂なんて気にしなきゃ良かったのに。








好きでした、あなたのことが。







さようなら、私の中学時代―――――